ランバート‧イートン筋無⼒症候群(LEMS)
監修:⻑崎総合科学⼤学 ⼯学部 ⼯学科 医療⼯学コース 教授 本村 政勝 先⽣
ランバート‧イートン筋無⼒症候群(LEMS)とは
ランバート‧イートン筋無⼒症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)は、四肢の筋⼒低下と腱反射低下、および⾃律神経症状*1を呈する神経筋接合部‧⾃律神経の⾃⼰免疫疾患*2です。
LEMSは50%以上に悪性腫瘍(主に⼩細胞肺がん)を合併するといわれています1)。
*1 ⾃律神経症状: | ⼝渇(ドライマウス)、性機能障害、便秘などの症状 |
*2 ⾃⼰免疫疾患: | 正常な状態では、細菌やウイルス、腫瘍などの⾃⼰と異なる異物を排除するための役割を持つ免疫系が、何らかの原因で正常な働きをせず、⾃⼰の正常な組織/細胞に対して過剰に反応し、攻撃を加えてしまう状態を表す疾患の総称 |
LEMSの疫学
⽇本でのLEMSの患者数は348⼈と推定されており、⼈⼝10万⼈あたりの有病率は0.27⼈と推計されます2)。
LEMSの症状
LEMSの症状は神経筋接合部障害に起因する神経筋症状と⾃律神経症状に分けられ、以下のような症状がみられます1)。
⽇常⽣活における困難な⾏動
LEMSの症状がある場合、以下のような⽇常⽣活が困難となります。
- 歩⾏
- 椅⼦から⽴ち上がる
- 物を持ち上げる
- 咀嚼/嚥下
- 階段を上る
LEMSの診断
LEMSの診断は、症状に加え、以下の検査によって⾏われます。
- ⼿⾸や肩、顔などを電気で刺激し、神経から筋⾁への伝達に異常がないかを調べる検査(電気⽣理学的検査)
- LEMS患者さんに多くみられるP/Q型カルシウムチャネル抗体を確認する検査(⾎液検査)
LEMSの症状は重症筋無⼒症(MG)、ギランバレー症候群(GBS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの疾患と類似しており、症状のみでは診断が難しいとされています。
そのため、脳神経内科専⾨医*による詳しい診察を受けることが重要です1)。
*⼀般社団法⼈ ⽇本神経学会, https://www.neurology-jp.org/index.html(2023年12⽉閲覧)
LEMSの治療
LEMSと診断されたら、まず悪性腫瘍の検査を⾏います。
- 悪性腫瘍が⾒つかった場合:
悪性腫瘍の治療を⾏います。悪性腫瘍の治療後はLEMSの症状も改善されることが多いですが、LEMSの症状が悪化してしまった場合はLEMSの治療を⾏います。 - 悪性腫瘍が⾒つからなかった場合:
LEMSの治療を⾏いながら診断後少なくとも2年間は悪性腫瘍の検査を継続します。
LEMSの治療では、患者さんの症状に応じて免疫治療などを⾏います1)。
疾患情報サイト
参考⽂献
1)重症筋無⼒症∕ランバート‧イートン筋無⼒症候群診療ガイドライン作成委員会編集:重症筋無⼒症∕ランバート‧イートン筋無⼒症候群診療ガイドライン2022(⽇本神経学会監修), 2022, 南江堂
2)吉川弘明ほか.重症筋無⼒症ならびにランバート‧イートン筋無⼒症候群の全国疫学調査―⼀次調査による患者数推計.
厚⽣労働省神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準‧重症度分類‧ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証班平成30年度研究報告書.